白と黒、対極に位置する色同士をはっきりと
混ぜ込まない。
それは、日本人の中にある、少し変わった特徴で
あるのかもしれない。
近頃私は、しなやかな表現、淡い文章、そんなものが描ければなぁと
試行錯誤している。
何かを批判するような文章ではなく、
誰かを傷つけるような文章ではなく、
ただただ、暖かさや、温もりが生じるような、
誰かが見る事でホッとするような、そんな文章を書ければなぁ
と、そんな感想を持っている。
淡く、にじんだ表現というのは、はっきりとした色合いを
主張した文章より書く事が難しい、そんな気もする。
せっかく読んでくれている人がいるのだから、
その文章を読んだ事の印象や後味があまりすっきりしないものより、
読んだ事で、何故だか「心が温まる」というような作用を及ぼす文章に
出来ればなぁと、私は思う。
文学的表現、それがどの様なものであるのか、私は極めて明瞭に
分かる訳ではないのだけれど、さまざまな文章の中で、どんな特徴を持つ表現が
どの様な効果を及ぼすのか、そのような事に少しだけ興味が湧いている。
個々の作家の著書から受ける印象は、その人の特徴として、
極めて大きな影響を自分自身に及ぼす事がある。
多くの作品に触れる事で、「ああ、世界はこんなに広いんだ」とか、
「世界はこんなにも美しいものなんだ」とか、日常で味わう事が困難な、
様々な体験を自分自身の身体に重ねる事が出来る。
「生きている」、それは個々別々の体験である。
その体験の中で、私の特徴や性格である「優しさ」や「淡さ」を
うまく表現できる様になれたなら、とても素敵な事であるに違いない。
今、ふと、時計を見ながら、そんな事を考えている。

