今から20年くらい前の話。
現実ではなく、夢の中の話。
恐らく私は、17〜18歳だったのだけれど、
よく夢の中で夢の内容を分析したり、解釈したりしながら、
夢と戯れていた。
その当時、私は、とある事情から学校へ行けなくなり、
家の中で悶々と過ごしていた。
家の中に居ても取り立ててやる事もなく、
楽しい事もなかったので、眠ってばかりいた。
眠りながら、色々な事を考えていると、
とても面白い事が分かったりする。
私は、分析したり、研究したりするのが好きなので、
夢の中でもその事を繰り返していた。
そうすると、ある表現者の表現されている物語の中に、
その人の原風景が宿っているのを見つけたり、
思いもよらない事柄から、その人の無意識を探れたりする。
当時、最も苦しかった事が、「模倣とオリジナルの境界線を探る作業」で、
その分析や研究を永遠と続けていた所、ある時点で、その境界線を飛び越える事が
出来る様になっている事に気づいた。
私自身、現実世界でも、夢の中でも、
象徴やイメージの分析と研究をしていたので、
夢の中での象徴やイメージの操作が上手くなるにつれ、
外界の印象も変わっていき、象徴やイメージそのものと、
この世界との関わりがはっきりと自覚できる様に
なっていた。
その当時、様々な夢を見たのだけれど、特に印象に残っているのが、
ある少女というより、ある女性の夢だった。
ある国のある大学のおそらく首席の女性の夢だった。
その夢を見てから(厳密に言うと、その夢を見た直後から)、
この現実世界に対する見立てが劇的に変化した。
おそらく、「現実の中で人が夢を見ているだけではなく、
夢が現実に働きかけて、夢の働きかけに応じて現実を動かしている」
そんな観念が、頭の中に実感を帯びて立ち上がる瞬間があった。
今でも、彼女の事を思う事がある。
夢の中での出来事なので、本当に彼女がこの世界にいるかどうかは分からない。
いや、寧ろ、いない可能性の方が高いだろう…。
ただ、この夢を見なければ、
良い意味においても、悪い意味においても、
おそらく、今の私の人生は存在しなかっただろう。
だから私は、「夢の中の彼女」に少しだけ、感謝していたりする。

